ラストダンス とくべつなこと。 忍者ブログ
テンカカ・カカイルをメインに扱う二次創作小説サイトです。18歳未満・高校生の閲覧はご遠慮ください。
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とくべつな日に、とくべつなプレゼントを。



その日はなんでもない一日として終わるはずだった。
溜まった洗濯や掃除、部屋の中で愛読書に耽り…たいしていつもと変わらないただの休日は、夜に部屋を訪ねてきた後輩のお陰で、俺にとってとくべつな日に変わった。

「すみません、夜分遅くに…もう夕餉は済んでますか?」
「いや、これから食いに行くか考えてたトコ。どっか行く?」
「ああ、ちょうど良かった、さっきこれをもらって…どうです、一杯やりませんか?」
眉を下げたテンゾウの右手にはかなり大きめのビニール袋がぶら下げられていた。
恐らく旧知の友にでも会い、押し付けられたのだろう、無造作に放り込まれた品々は今にも袋を破って飛び出してきそうだ。
「はは…いきなりこんなもの持って押しかけられても困りますよね、すみません 」
謝りつつ帰ろうとする後輩を引き止め、体を斜めにした。
「ま、イイデショ 上がりなよ、簡単なものなら用意出来ると思うし」
嬉しそうな顔しちゃって、猫面を付けるくせに犬みたい、と内心くつくつ笑いながら部屋へ促す。
「どーぞ」
「お邪魔します」
几帳面な後輩は俺の家でも粗相なんてしない。きっと誰の前でもこうなんだろうね。きっちり揃えられたサンダル。何気ない動作で昨晩脱ぎ捨てたきりの俺のまで揃えやがった。

袋の中身は想像した通り酒がごろごろ入っていた。あまりにもぞんざいな扱いだから安酒なのかと思ったが、銘柄を見ておお、と言ってしまうくらいにはいいものばかり揃っていた。
「あまり酒は得意じゃないので断ろうと思ったんですけど…いいからって持たされてしまいまして」
にこにこと、でも困ったふうに笑うテンゾウはてきぱきと瓶を並べ、どれから飲みます?と聞いてきた。テーブルの前にちょこんと座ってこっちを見上げる。
「ん、どれでも。貰ったのはお前なんだからテンゾーの好きなのから開けなよ」
氷はあっただろうか。水割りかロック、この時期にはまだ早いけどお湯割りでもいいかもしれない。
「先輩、台所借りてもいいですか?」
「んーあーいいよー冷蔵庫の中好きなもの使っていいから ミネラルウォーターも出してちょうだい」
食器棚からちょうどよさそうなグラスを二つ探し出し、軽く拭きあげてからテーブルに置く。

それからは、テンゾウが用意してくれた料理(とはいいがたい手抜きさだったが)を適当につまみながら話をした。
話題は暗部の仲間のことからナルトや こういう時に堅苦しい話はナシだ。
カラカラと氷を転がし、グラスを見つめていたテンゾウはふと目線を上げた。物言いたげに瞳が揺れる。「どうした?」
「カカシさん、貴方にお渡ししたいものがあります。」
「ん、なによかしこまっちゃって つまらないものだったら一番強いやつ一気させるからね」
「はは、ご冗談を」 テンゾウは先ほど脱ぎ捨てたベストを拾い上げ、ホルダーからするりと用紙を取り出した。
様々な記入欄を載せた一枚の紙。 「これを」 そう言って卓上を滑らせ差し出してきたのは 婚姻届。  

「な…なんなのよコレ…」
 「見たままの通りです。」そう言ってテンゾウはいつになく真面目な顔をした。
「婚姻届ですよ。」
 「お前…馬鹿なの  酔ってるんでしょ… 俺をからかって楽しい?」
ほどほどに回っていた酔いが一気に冷めた。鼻で笑ってやった。だってできるわけがない、テンゾウは男、俺も…忍の、男だ 馬鹿にするな。ふつふつと沸き上がる苛立ちに、テンゾウは怯えるように肩をすくめ、上目を遣う。 
「馬鹿にしてる、とか、無理だって思ってらっしゃるでしょう…?」
 「…だって、無理だ」
 「そんなことないです。ボクは酔ってないし、冷静さを欠いてなんかいませんよ?」  
「無理だよ 誰かと間違えてるんじゃない?」
「誰と貴方を間違えるって言うんですか。この里で銀髪は先輩くらいですよ。」
「じゃあきっと罰ゲームとかでしょ?この酒をくれた奴に言われてきたんだ、そうでしょ」
「違います、たしかに酒は貰いましたが…ボクは自分の意思で先輩のもとを訪ねました。」
「じゃあ、これはなんなのよ…男同士だよ?できるわけないじゃない。こんなの役所に持って行って、笑い者になりたいワケ?」
「では…なぜ拒むんです?先輩ともあろう方が、笑い者になって、後ろ指を指されることが怖いのですか?」
「そんなことどうでもいいっ 質問に質問で返すな!」
 「では、なぜ?」 テンゾウは真っ直ぐな目でこちらを見つめてくる。大人になってもこいつの目は大きなままだ。
この目を、怖いと思うことがあった。すべてを見透かすような… こぼれ落ちそうな黒目を持った少年は、優しい顔で目元を緩めて微笑む青年へと成長した。 その目が、今俺を見ている。
言葉に詰まった。これを言ったら、テンゾウを傷つけてしまうかもしれない―そう思うと言葉に出来なかった。
「…なぜ、貴方は言葉にしてくれないんですか…?言いたいこと全てを飲み込んでしまう。うわべだけの、ハリボテみたいな綺麗事を並べてカカシさんは生きた心地がするんですか?」
むかむかする わかったふうな口を聞きやがって。後輩のくせに。
 「…別に」
 「ほらまたそうやって 貴方は誰とも向き合わないんですね 昔からそうやって ずっと傍にいたボクにさえ 作り笑いを見せて強がって…最近の貴方は

―パンッ

「ふ…ざけるなっ!俺の何がわかるっていうんだよ!!後輩のくせに!!馬鹿!馬鹿テン!!」
ついカッときて、言葉より先に手が出た。これじゃ子どもだ。 避けると思って加減をしなかったから、口の端が切れたようだ。血が、垂れる 拭う指も男らしくなった。 あの頃の豆もやしはどこに行ったんだろうか。
少し俯き加減に顔を逸らし、眉を寄せた。
 「…わかりません、ボクは貴方じゃない 貴方もボクじゃないからわからないでしょう?ボクがこの紙を、ただの紙切れですよ?これを貴方に渡そうと思った理由なんて、どんな思いでこれを用意したのか分からないでしょう」  
「…わかんないよ、わかんないから動揺してるんじゃない お前何がしたいのよ…」  
「貴方と、カカシさんと一緒にいたいです」  
「今いるじゃない」
 「そうじゃなくて ああもう…貴方のものになりたいんです 貴方をボクのものにしたいんです」  
「俺もお前も木の葉の忍だよ 里のものだ」
 「…まったく、貴方という人は…ここまで言っても分からないんですか…」
短く切られたこげ茶の髪に手を突っ込みガリガリ掻いている。目を閉じ、深いため息をついた。
テンゾウは口の端からだけでなく、鼻血まで垂らしていた。端整で精悍な顔が痛みにゆがむ。
なんで俺は、ずっと大切にしてきたテンゾウを傷つけているんだろう。なんでこいつは俺に傷つけられても後を着いてくるんだろう。わからない、わからないことだらけだ。唇を噛んだ。
「なんで、貴方のほうが痛そうな顔をしているんですか…」
抱き寄せられ、抵抗も出来なかった。こいつの腕は、何時の間にか大樹の幹のようにがっしりとして逞しくなった  
「カカシさんは鈍すぎるんです…」
「…なによそれ、俺が鈍ってるって言いたいの?ちゃんと鍛錬してるよ」  
「そうじゃなくて。ボクの気持ち、ちゃんと分かってます?」 顔を覗きこまれた。
「テンゾウの、気持ち…?」
「そうですよ、ボクの正直な気持ちです。」
「テンゾウの気持ちなんて…わからないよ…お前だって、俺に言いたいことあるくせに黙り込んだりしてきたじゃない。お互い様だよ」
「だから今言ってるじゃないですか。ボクだって馬鹿じゃないですから、言わなくても全てわかるなんて思ってなんかないです。むしろ、ボクは気持ちを正直に打ち明ける機会がほしかった…!」


「今まで、ボクは貴方の後輩として生きてきた。実験台として番号で呼ばれていたボクに名を与えてくれた。
世界は広いと、狭くて四角い灰色ばかりでない無限に広がる美しい世界を見せてくれたのは貴方でした。 カカシさんは、ボクに鎖のない手足がいかに軽いか教えてくれました。
カカシさんの髪が光に当たってきらきらして、眩しくて…あの時の記憶は絶対に失くすつもりはありません…カカシさんはボクを、ボクを救ってくれた…あの時からボクの小さな世界は貴方で満たされたんです。
貴方はボクを一番わかってくれている、そんな人を失いたくなかった…後輩として、ずっと傍にいられればそれでいいと思っていました。 もし貴方に拒まれたら、と思うと…怖くて言えなかったんです。貴方への恋情なんて…」

テンゾウの口から連なる言葉は俺の記憶さえ呼び起こした。そうだ、テンゾウをあの施設から助け出したのは俺だ。

俺は、あの時テンゾウを抱きかかえた。人の温もりを知らない子は酷く震え、また、痛い…?とぽつり漏らし、諦めたように力を抜いた。
大丈夫、痛くない、大丈夫だ 大丈夫 大丈夫…そう言い続け、抱きしめたまま駆けた。
痛いの…?と聞かれ、やっと自分が泣いていることに気付いた。子どもは資料で見た歳の割に軽すぎた。

テンゾウの最後の一言によって記憶のフラッシュバックから戻される。
「…は 恋情…?」
「だから、ボクは貴方に好意を抱いているんです」
「え、こ、好意…」
オウムのようにテンゾウの言葉をただ繰り返すしか出来なかった。
頭の中がパンクしそうになっている…いやもうしているのかもしれない。俺としたことが…言葉がうまく理解できない
「カカシさん、貴方が、好きなんです。」
「…だれが」
「ボクが」
「うそ」
「嘘なんかじゃないです。今までのやり取りを思い出してください。ボクが婚姻届を渡した理由、わかりましたか…?」
「え…じゃ、あ それってつまり…」

立ちあがったテンゾウは、俺の前に跪いて左手を取る。
「病める時も 健やかなる時も
たとえ敵忍に囲まれ窮地に立たされても、貴方を愛すると誓います。
貴方もボクも忍だから確証なんて得られないとわかっています。それでも、どうかこれからの人生をボクと一緒にいてくれませんか…?
辛さも、痛みも、幸せも…全て分け合う存在になりたい…」

「…馬鹿、鼻血拭いてから言いなさいよ…かっこ悪いじゃない」
「これはカカシさんがやっ…カカシさん?」

なんで視界が歪むのかと思ったけど、俺はボロボロ泣いていた。
「テンゾウは馬鹿だよ、言わなくたってわかってるじゃない…俺が、里の誰よりも俺がお前を一番わかっていると思っているよ こんなこと言わなくたってわかるでしょ…? お前は、テンゾウは…とっくに俺のだよ。だって俺が拾ったんだもん、所有主は俺でしょーよ」
テンゾウはぐすぐすとまるで子どもみたいに泣きじゃくる俺をあやすようにそっと、背を抱いてくれた。
「はは、物扱いですか。それも悪くない。 これからの人生を貴方に捧げ、貴方の手となり足となり貴方を支え、共に生きていくことを誓います。」
そう言って俺を見上げた。

ボクと、結婚してください。






Happy Birthday カカシさん!
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